
(相撲協会理事)
私は子供の頃から運動が好きで、マラソン、駅伝、柔道、水泳など、あらゆるスポーツをやりましたが、そんな中で、自分がこの相撲の世界に飛び込んだきっかけは、三つ年上の兄貴の影響でしょうね。
私は7人兄弟の6番目でしたから、家にいても邪魔にされたんですよ。体が大きくて、飯も良く食べたしね。将来どうするかと考えたときに、相撲部屋に入門していた兄貴の姿を見て、自分にも、これしかないのかなと思ったんです。
入門した当時は80kgしかなくて、なかなか大きくなれなかった。強くなるためには、とにかく体を大きくしなければならない。そのためにはどうすればよいかを考えて、しっかりした食事をするように気をつけました。
力士の食事といえば、お店で出てくる鍋料理だけを想像する人も多いと思いますが、「ちゃんこ」とは必ずしも鍋料理だけをさすのではないんですよ。
「ちゃんこ」とは、相撲界で「食事」という意味。相撲部屋は明治大正の頃、200人くらいの大所帯でしたから、どういう料理にすればまかないやすいか、なおかつ、強い体をつくれるかと、当時の当番が考え出した方法が、皆で囲んで、温野菜もたっぷりとれる「ちゃんこ」だったんです。
引退から20年以上過ぎた今、現役の時に108kgあった体重を、88kgくらいに戻して、ずっと維持しています。
引退した後に、勝負事から開放されるためか、不摂生になってしまう者もいるようですが、私は飲みすぎ食べすぎ、睡眠不足などにならないように気をつけています。また、週に何回か、40分から1時間くらい歩くようにしているんです。
毎日じゃないのは、気が向いたときに、自由に出来るように。毎日の義務にしてしまうと、それ自体がストレスになって、かえって体に悪い気がして。
これは、若い衆にも伝えていきたいことなのですが、自分自身に、ある程度の課題を課すことはもちろん必要です。そうでなければ進歩はありません。しかし、その課題がうまく果たせなかった時、それをストレスに感じてはいけないんです。相撲は15日間の勝負ですから、今日の負けを、次の日に引きずってしまうようでは、15日間戦い続けることは無理。反省をするなり、喜ぶなりするのは千秋楽の後で良い。こういった切り替え術は、なかなか難しいものですが、勝負事はもちろん、健康についても重要なことだと思うんです。ストレスはためずに、すぐに気持ちを切り替えることは健康の秘訣ですね。
春と秋には必ず人間ドックを受けるようにしています。結果はいつも良好で、今まで大きな病気は一度もありません。膝などを怪我したりすることはあっても、病気で入院をしたことは無いんです。こういう健康な体に生んでくれた両親に、一番感謝していますよ。両親から授かったこの体、細胞の一つ一つを無駄使いしないよう、襟を正すような気持ちで生活しています。
私も「親方」という立場ですから、若い衆の健康を管理してやらなければいけません。とくに気を配っているのは、朝一番の挨拶ですね。挨拶に元気が無いと、どうしたのか心配します。もちろん顔色を見るだけでも、ある程度は分かりますが、やっぱり声をかけてみて、どういう返事が返ってくるか。それで、その若い衆がどういう健康状態なのかが分かるんです。
「健全な肉体には、健全な精神が宿る」その言葉通り、健康だからこそ「おはようございます!」と爽やかに挨拶が出来るし、元気に挨拶をしようという、その心こそが健康な体を作る。これも、健康法の一つじゃないですかね。(談)