医療法人社団同友会 副理事長
春日クリニック 医師
高谷 典秀
日本でも人間ドック受診者1,098人を対象にした報告では、早期心不全を検出する感度は90%、特異度は96%と高い診断能を認め、さらに心電図と併用した場合は感度が97.9%まで高まることも指摘されています。このようにBNPを測定することにより、心電図検査では見落としてしまう症例を検出したり、心電図検査の異常所見をより確実に診断することが可能となります。
同友会春日クリニック、深川クリニックでは、昨年度まで日帰り人間ドック(Aコース)のルーチン検査項目として実施していた運動負荷心電図を今年度より行なわない方針といたしました。運動負荷心電図では、安静時心電図では明らかとならない虚血性心疾患のスクリーニングや不整脈の検出を中心に判定してまいりましたが、一方で運動負荷試験に伴うリスクもさまざな角度から報告されています。
合併症発症率は運動負荷試験中または直後の死亡リスクが0.01%以下、心筋梗塞の発症リスクは0.04%以下と非常に低いと考えられていますが、ある予防医学クリニックにおける7万回以上の運動負荷試験においては、一人の死亡例を含む6例の重症合併症が認められています。

それ以外にもさまざまな報告がありますが、運動負荷1万回あたり合併症の発生は0.7~3.2例、死亡例は0.2~1例程度と考えられます。
当院では事前の問診によるハイリスク受診者の除外等によりこれまで致死的な合併症を生じた例はございません。しかしながら年間約2万例の負荷心電図を実施している状況下に起きましては、受診者の方々の安全を第一に、より慎重な対応が必要と考え今回の判断となりました。これまで運動負荷心電図を用いて検出を目指していた、症状に乏しい虚血性心疾患など安静時心電図では発見が難しい心疾患を、これからはBNPを用いてカバーしていくことが重要だと考えます。
これまで春日クリニックではオプション検査としてBNPを行なってまいりましたが、今年度よりNT-proBNP(ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)という項目へ変更いたします。このNT-proBNPはBNPと同じ臨床的意義があります。実際には、心臓から前駆物質であるpro-BNPが産生され、その後BNPとNT-proBNPに分解されて血液に放出されます。NT-proBNPはBNPに比べ保存安定性が良好で測定結果の信頼性が高く、重症度をよりダイナミックに反映する特徴を有しているといわれています。
最近の研究ではNT-proBNPがBNPに比べて心機能や長期予後の予測により有用であったと報告されています。日本ではNT-proBNPは平成19年8月より一般での測定が可能となり、同友会でも平成20年度より従来のBNPからNT-proBNPへ変更いたしました。今まで心電図で異常を指摘されていたものの精密検査などを受けていない方、心電図は正常なものの心疾患が心配な方は一度検査することをお勧めいたします。
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