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季刊誌「お元気ですか」66号インデックス

文中の肩書は取材当時のものです。

慢性腎臓病とは1

医療法人社団同友会 品川クリニック所長 横松 守

医療法人社団同友会
品川クリニック 所長
横松 守

最近新聞、雑誌等で慢性腎臓病という病名を目にすることが多くなりました。
この病名は最近になり新たに使用されるようになったもので、蛋白尿など腎臓に障害が存在すると 思われる所見や、腎臓の老廃物を排泄する機能を表す検査の一つである糸球体ろ過量(glomerularfiltrationrate:GFR)が60ml/分/1.73m2以下(正常値は約100ml/分/1.73m2)に減少した状態が3ヶ月以上続く場合を指します。非常に簡単な定義ですので腎臓専門外の医療従事者の方々や一般の人たちなどにも十分理解していただけるものと思われます。

なぜ慢性腎臓病が重要か

新たに慢性腎臓病という病名が設けられ、この病気に対する対策が叫ばれるようになった第一の理由は慢性腎臓病患者が透析導入の高リスク群であるということです。

慢性透析患者総数の推移

図1に透析患者数の推移を示しますか、その数は年々増加傾向にあり2006年12月末には26万4000人を超えました。

透析患者数が増えることで問題になるのは透析にかかる医療費の増加です。一人の透析患者にかかる年間の医療費は540万程度(ほとんど国から支給されますが)とされますので透析患者全体での医療費は1兆3000億を優に超える額と考えられます。
現在透析にかかる医療費の削減が種々の方法で行なわれていますが、その中で透析導入患者数を減らすということも重要な対策の一つとなっています。
慢性腎臓病患者は透析導入の高リスク群であり、しかもその数は多く20歳以上の一般住民において約2000万人の患者がいると考えられています。透析導入患者数を減らすためにはこの慢性腎臓病患者を早期から管理して透析への移行を防止する、あるいは透析への移行時期を延長するということが重要です。
第二の理由は慢性腎臓病患者では脳卒中、心筋梗塞、心不全などの心血管系の合併症が多いということです。この合併症の発症率は腎機能の低下に伴い増加しますが合併症による死亡率も高く、慢性腎臓病患者では心血管系の合併症で死亡する患者数のほうが透析に移行する患者数より多いということが明らかになっています。

平成16年度の日本人の死因で最も多いのは悪性新生物で全体の死因の31.1%を占めていますが死因の第2位は心疾患で15,5%、第3位は脳血管疾患で12,5%を占めています。
心血管系疾患としてこの両者を合わせますと28%となり第1位の悪性新生物による死亡の割合とそう変わらない数字となります。心血管系疾患を予防し、この疾患による死亡率を減少させる為には心血管系の合併症が多い慢性腎臓病患者の管理も極めて大切なことになります。

今、糖尿病腎症対策が重要

図2に年別に見た透析導入患者の主な原因疾患の推移を示します。

年別透析導入患者総数の推移

この図をみてわかるように糖尿病腎症や高血圧症が主な原因である腎硬化症による透析導入数が増加してきていますが、特に糖尿病腎症による透析導入数の増加は著しいものがあります。1988年から糖尿病腎症が透析導入の原因疾患の第一位となりましたが、その後も増加を続け、2006年には全体の半数近い42,9%を占めるに至りました。このため糖尿病腎症発症や進行を抑制することが慢性腎臓病対策の最も重要な課題になっています。

糖尿病腎症は網膜症や神経障害とともに糖尿病の三大合併症といわれており、糖尿病に最も多く見られる合併症の一つです。これらの合併症は一般的に糖尿病のコントロールの指標として最も用いられているヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%以上の状態が長年続くと発症する危険性が高くなることが知られています。

図3に糖尿病腎症の臨床経過を示します。

糖尿病賢症の臨床経過

糖尿病を発症してから5年以上たちますと、尿中に血液中の蛋白質の主成分であるアルブミンが漏れ出すようになりますが、極小量のため一般に行なわれている試験紙法による検査では発見することが困難です。
これを微量アルブミン尿といい、この尿が続く時期を早期腎症期といいます。さらに進行すると尿蛋白が増量し普通の検査法でも陽性となる顕性蛋白尿を示すようになります。この時期を顕性腎症期といいますが、この期間では腎症の進行が比較的早く尿蛋白の増量と共に次第に腎機能が低下してやがて腎不全期、透析療法期へと移行していきます。

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