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季刊誌「お元気ですか」59号インデックス

文中の肩書は取材当時のものです。

アートを通して自己表現~心を癒すアートセラピー~

春日クリニック 医師 日本医師会認定産業医 角 みどり

アートセラピスト
黒須 美枝

心を癒すアートセラピー

インターネットが普及し、仕事上のちょっとしたやり取りでもメールが使われるようになった今、会話によるコミュニケーションというものが希薄になってきている。中には同じ職場で、同じフロアに机を並べる社員同士でも、メールを使ってやりとりをするケースもあるようだ。このような極端な例でなくとも、自分が感じていることや伝えたいことを、外に向けて表現することは意外と難しい。

「アートセラピー」というものをご存知だろうか。心療治療の一つとして実際に使われている方法で、アートといっても芸術的な才能を問われるような難しいものではない。自由に画を描いたり、粘土で形を作ったりするだけの親しみやすさから人気を呼び、各地で講座も多数開かれている。

「自分自身の力で、自分の意識や潜在意識に気づくことでの、幸福感の大切さが言われていますが、実際には把握しにくいものです。アートセラピーは、とらえどころのない心の世界を、クレヨンと画用紙で明らかにしていきます。そこには、自分を知ることでの癒し、そして魂の源泉のデータが溢れています」

そう話すのは、アートセラピストアカデミーの黒須美枝先生。日本におけるアートセラピー研究・普及の第一人者である。医療現場でのアートセラピーは、治療やリハビリテーションを目的としているのがほとんどであるが、黒須先生の場合は、誰もが心身ともに健康に生活していくための指針としてのアートセラピーというものを提唱している。

「私たちはアートを通して、憩いの場というものを提供しています。心をより健康にするだけではなく、自己表現をすることで、自分でも気づかない潜在能力を引き出してあげることもできると考えています」

ストレスの原因と向かい合う

 黒須先生には、春日クリニックで実施している健康ミニ講座の中で、「心を癒すアートセラピー」と題した二月限定の特別講座を担当していただいた。参加された方には、一人ずつ画用紙とクレヨンが配られ、実際にアートセラピーを体験できるというもの。

「以前、怒りをテーマにした画を描いていただいたことがあるのですが、参加された方の中で、画用紙の一番下に、端から端までの黒の長い波線を描かれた方がいるんです。これは、ご主人に対する怒りやイライラが、今後も長く続いていくのではという意識が現れたものでした。この画ではあまりにもつまらないのではということで、後から花や太陽を描き加えたりしたんです。ですが、太陽なんて無理だからと、雨雲を描き加えて完成されました」

好きなものを描くというテーマでも、一番嫌いなものを描いてしまう人が少なくないという。嫌いなもので、忘れたいと思っているものこそ、深層心理に強く根付いているということであろうか。だがそれらは、自分でも気づかないうちに、大きなストレスとなっていることもある。ストレスの原因となっている事柄は何なのかを知り、向かい合うことで、問題解決の糸口が見つかるのかもしれない。

自分自身の羅針盤にも

「三十代で学校の先生をされている方なのですが、親に結婚をしろとせかされているのです。その方が描かれた画は、自然いっぱいの風景の中に、ご自身が道端にしゃがんでいます。両親も描かれているのですが、自分とは違う方向を向いています。
そして、自分の目の前には川があり、その向こう岸には実をつけた木があるのですが、その横には暗いトンネルもあります。本人の中では、親の言うなりに結婚なんてしたくないと考えているのですが、自分のやりたい事をするためには、目の前の川(障害)を越えなければならない。川さえ渡れば、実をつけた木(自己実現)があるのに、暗いトンネル(不安要素)もありそうだという、そういった心境が良く現れているんです」

言葉には表現しにくい悩みやストレスでも、画によって伝えられることもある。自分の魂の現れともいえる画を分析すれば、自分自身の羅針盤にすることができるという。

「最初は、画なんて描けっこないと思われる方がほとんどです。ですが、幼い頃の両親との思い出など、過去の記憶を辿ると、びっくりするほど良く描けてしまいます。
そういった記憶は、普段は表に出ることはありませんが、実は私たちのことを影ながらサポートしてくれています。目で見たものだけではなく、たとえば母親に抱かれたときの匂いや感触など、苦しいときや悲しいときなどに思い出し、リラックスできるんです。時々こういった画を描いていただくと、心の活性化にもなりますので、ますますお元気になられるかと思います」

画用紙とクレヨンは、幼い頃に誰もが使ったことのある画材で親しみやすい。アートセラピーに参加された人は、皆童心に返り、終始にこやかで会話も弾んだ。黒須先生は4月から西武池袋百貨店「池袋コミュニティ・カレッジ」で講座を開かれるので、興味を持たれた人は参加されてみてはどうか。

詳しくは、アートセラピストアカデミー(有)
TEL&FAX048-647-3080まで。 

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