職場におけるメンタルヘルスマネージメント02|人間ドックなら東京の同友会 春日クリニック

季刊誌「お元気ですか」58号インデックス

文中の肩書は取材当時のものです。

職場におけるメンタルヘルスマネージメント02

独立法人労働者健康福祉機構 神奈川産業保健水神センター相談員 聖マリアンナ医科大学講師 杉森裕樹

独立法人労働者健康福祉機構
神奈川産業保健水神センター相談員
聖マリアンナ医科大学講師 杉森裕樹

職場のメンタルヘルスマネージメント(4つのケア)

職場のメンタルヘルスマネージメントで大事な点は、次の4段階のケアです。(「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」平成12年8月9日労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課)

  • セルフケア:
    社員みずからが行う行動、自身の精神的問題への気づき
  • ライン(上司)によるケア:
    管理監督者などが行う活動、部下の精神的問題への気づきと対応
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア:
    産業医や安全衛生担当者などが行う活動、具体的には個別相談と指導・社外機関への紹介・教育啓発・追跡管理
  • 事業場外資源(専門機関)によるケア:
    厚生労働省関連機関(労災病院)や地域の専門機関などを利用した活動です。

セルフケアでは、心の疲労の解消する予防法を身に付けることです。
仕事のことを考えない時間をつくる、自分の力を過信しない、やりすぎない、今までの生活スタイルを見直す、事態のとらえ方を見直すといった事が大切です。
わたくし個人の意見ですが、軽い晩酌もいいストレスマネージメントです(笑)。そして「体が壊れるな」と思ったらすぐ必要に応じて、事業場内産業保健スタッフ等に相談してください。

ラインケアで重要な点は、

  • 職場のコミュニケーションをよくし、ストレス要因を把握する
  • 部下をよく観察し、必要に応じて個人面談などの場をつくる
  • ストレスの受け止め方や健康障害への陥りやすさの個人差を理解する
  • 高ストレス状態にある者に業務上配慮などの支援を怠らない
  • 必要に応じて、専門スタッフと連携をとる
  • 十分にプライバシーに対する配慮を行う
です。
ラインが日常の観察からの気づく変化には、遅刻、早退、欠勤が増える、休みの連絡がない、残業、休日出勤が増える、業務の効率が低下している、報告や相談、会話が少なくなる(またはその逆)、元気がない、表情が乏しい(またはその逆)、不自然な言動が目立つ、ミスや事故が目立つ、衣服が乱れる、不潔になるなどがあります。
また、面談によって気づく変化には、
  • ア)仕事の様子:被害的な思い込みが強い、集中できない、必要以上に自分を責める、記憶力が落ちた気がする、話が回りくどい、話にまとまりがなくなる
  • イ)態度:横柄になる、他人の目が気になる、おどおどする、イライラして落ち着かない、怒りやすい
  • ウ)生活面:睡眠に支障が出る、飲酒量、喫煙、コーヒー摂取量が増加する、食欲がなくなる、いろいろなことに無関心になる
  • エ)体調:胃腸症状(胃痛、腹痛、下痢、便秘など)を訴える、動悸がする、気が遠くなる感じがある、腰痛がひどくなる
  • オ)その他:出勤時酒臭い、人付き合いをさけるようになる
などがあります。

高ストレス状態にある者に、業務上配慮などの支援を怠らないといったことも重要です。
残業を減らす、仕事の質をかえてあげる、ノルマや長いスパンの仕事は与えないなどの配慮が有効です。
また、部下からの訴えを待っているだけでは不充分です。上司が気がついて、部下にアクセスし、メンタルヘルス不健康者を拾い上げていくことが肝要です。
予防の視点で普段から声かけや顔を見ていることが大事です。事業場外資源(専門機関)によるケアも有効です。
必要に応じて、専門スタッフとも連携を取りながらすすめていくことが必要です。メンタルヘルス不健康者の多くは判断力が低下していますから、広い視野で物事がみられなくなります(ひどい場合は「死ぬしかない」となってしまいます)。
そんな状態の人に怒鳴ったり、励ましたりしても逆効果です。出社してきただけでも、よく出来たと誉めてあげるぐらいでいいと思います。
もしうつ病などの場合、一端自宅療養となると3ヶ月、半年、1年の休職は良く経験します。月単位でしか回復しませんので、風邪のように、無理して出て来いというのは駄目です。早い段階で慢性化させないような職場のメンタルヘルス管理(マネージメント)が、本人にとっても会社にとっても重要です。

長時間の残業も要注意

メンタルヘルス不健康者は、人間関係の悪化(上司に怒鳴られたとか、部下に裏切られるとか)が誘因となることも多いですが、その背景として過重労働も見逃せません。
時間外労働(残業)は月45時間以内では問題が少ないとされていますが、時間が増えるにつれてリスクが高まり、80時間を越えると危険性が高い状態となります。
たとえば、時間外労働が月80時間ですと、毎日10時頃まで仕事をしていて、帰宅が12時頃。すぐには眠れないから床に入るのは深夜1、2時。そして、翌朝5時に出勤のため起床する・・・。
これでは生理的な睡眠リズムをもてるはずがありません。こういう状態が長期間続くときは、周囲(同僚・上司)も余裕がないことが多いです。次第に職場の中でお互いのコミュニケーション不足が続き、職場も殺伐とした雰囲気が漂います。
ある時、ほんの誤解から人間関係が悪化して修復がきかず、どちらか(多くは若い部下、いわゆる「パワハラ」にも繋がることがあります)がメンタルヘルスの調子を崩す場合が多いです。時間外労働の管理は、脳血管疾患や心疾患予防の視点から、重要な労務管理の一つですが、メンタルヘルスにも関係する点を強調して起きたいと思います。
毎週、日曜の夜、サザエさんの音楽が流れると憂鬱になる「サザエさん症候群」や、誰しも失恋で数日落ち込むことはあります。
しかし、自力回復ができない状態がメンタルヘルス不健康者です。身体的な問題であれば周囲に打ちあけられますが、メンタルははたからはわかりにくいものなので、1人で思い悩むことが非常に多い。
そのため、日頃からの職場のメンタルヘルスマネージメントが重要になってくるのです。

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