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季刊誌「お元気ですか」58号インデックス

文中の肩書は取材当時のものです。

職場におけるメンタルヘルスマネージメント01

独立法人労働者健康福祉機構 神奈川産業保健水神センター相談員 聖マリアンナ医科大学講師 杉森裕樹

独立法人労働者健康福祉機構
神奈川産業保健水神センター相談員
聖マリアンナ医科大学講師 杉森裕樹

21世紀の新たなる社会問題

警視庁生活安全局地域課の統計では、わが国の自殺者が平成10年以降毎年3万人を越えていることが報告されています。
交通事故の約1万人や労働災害の数千件に比べても、自殺者の社会的影響が甚大であることがわかります。
この自殺は、年齢分布は高齢者男性に目立ちますが、最近では30代でも4千人を越えてきているように、職場にも深刻な問題となっています。
この背景の一つに、職場におけるメンタルヘルス不健康者の増加があげられています。これらの事実と符合するかのように、旧労働大臣官房政策調査部の労働者健康状況調査報告(平成9年)では、仕事や職場での強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者が62.8%もあり、年々増加傾向を示しています。
職場のメンタルヘルス不健康者の増加は、生産性への影響、コストへの影響(私傷病休暇取得者や補充人員の人件費)、リスク管理面での影響(不当なリストラへの訴訟、過労死などの職場側の責任が問われる)など、職域の21世紀の新たなる社会問題となっていると言えます。

課長昇進を契機にうつ病になった40代男性の事例

うつ病などのメンタルヘルス不健康者というと、上司との人間関係に悩んで体調を崩しているケースばかりを想像しがちですが、実際には、まじめで優秀な中間管理職が発症するケースも経験することがあります。
たとえば、課長昇進を契機にうつ病になった40代男性の事例をご紹介しますと、妻と子ども2人(中学生と小学生)という典型的な家族構成で、性格は集中力が高く几帳面で責任感も強い。完全主義的な人も多い。
これまで仕事熱心で与えられた仕事はすべてうまく処理してきたが、管理職になると、部下や課全体のことも見ていかなければならなくなり、仕事がぐっと増えて、自分のことだけに集中できなくなった。
もともと、人付き合いが下手で、部下とどう接して良いのか対応がわからず、経験した事のないストレスが蓄積する。次第に以前の活気ある姿は消え、仕事を処理できなくなってしまったというケースです。
こういう人は、他人に仕事を任すことが下手で、なかなか部下を信じることができず、すべて自分でやってしまうことが多いようです。
そうすると仕事が増えて自分の能力の限界をこえてしまう。さらに部下は自分達が信頼されていないと感じ、部下との間にコミュニケーションの欠如も生じかねません。
このような状態が続くと、ぐっすり眠れない日々が続いて、抑うつ状態に陥ってしまいます。なんとか出勤はできるが次第に思考力も落ち、食事も喉を通らなくなり、やっとのことで仕事をやめたいと産業医に相談してきた。こんなケースは本当に多いのです。

リズムの切替が上手い人と下手な人

人間はかならず1日2回、自律神経のアクセル(交感神経)とブレーキ(副交感神経)の切替え(スイッチング)を行なっています。
仕事の時はアクセル踏み放題。家に帰ってお風呂や晩酌をしているときにはブレーキへと切替えています。
この切替が上手い人でメンタルヘルス不健康者になりやすい人となりにくい人がいて個人差があることを認めなくてはなりませんが、メンタルヘルス不健康者は、このスイッチングが往々にして不得手です。
家に帰っても、頭の中で仕事のことが離れないためなかなかブレーキがはいらず、興奮したままいつまでも寝られないという悪循環に入ってしまいます。

メンタルヘルス不健康者には睡眠障害を訴える人が多い

メンタルヘルス不健康者と面談すると「睡眠障害はない、6時間ぐらいは寝ている」という答えが良くありますが、さらに問診すると、実は途中で目が覚めていたり(中途覚醒)、よく夢を見ている(浅いレム睡眠)ことが多い。
それも上司に怒鳴られた夢とか、何かに追いかけられた夢を見ている人が多いです。
これはレム睡眠が多いことを意味していることが多いです。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠とあり、レム睡眠は浅い眠り、ノンレム睡眠は深い眠りの状態を指しますが、浅い眠り(レム睡眠)ばかりでは心身ともに十分に疲労を回復することができません。
うつ病などのメンタルヘルスの管理で『深い眠りにはいれない』点が最も重要であると個人的には考えています。

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