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季刊誌「お元気ですか」57号インデックス

文中の肩書は取材当時のものです。

心疾患と脳卒中の危険因子

順天堂大学医学部 救急・災害医学研究所助教授 奥村徹

順天堂大学医学部
救急・災害医学研究所助教授 奥村徹

心疾患と脳卒中、これらは血管にまつわる病気であり、血管が動脈硬化を起こすことが原因です。
動脈硬化は一生を通じて起きるもので、4~5歳の子供でもすでに動脈硬化が始まっていると言われています。
心疾患と脳卒中を防ぐためには、それらのリスクファクター(危険因子)を知り、ライフスタイルを見直すことが必要になりますが、自分ではコントロールすることの出来ないリスクと、コントロールすることが出来るリスクとがあります。

年齢、性別、遺伝、人権などは、自分ではどうすることも出来ない、コントロール不可能なリスクです。心筋梗塞などの死亡率は年齢と共に上っていき、脳卒中の頻度も55歳を超えると上昇して、年齢が10歳上がるごとに発生頻度は2倍以上になります。
性別についは、男性は閉経前の女性に比べて動脈硬化になりやすいと言われています。
しかし、閉経後は女性も男性と同じように動脈硬化が進んでいきますので注意が必要です。
脳卒中についても、一般的に男性の方が女性よりもなりやすく、働き盛りの男性が突然、心疾患や脳卒中に襲われることが多くあります。

もし、家族に脳卒中のある人がいたり、40代、50代など、若くして狭心症や心筋梗塞になった人がいる場合には、遺伝子的要因が疑われ、本人もリスクが高くなります。
さらに人種に関しては、黒人、白人、黄色人種、それぞれリスクが異なるといわれております。
黒人に喫煙の習慣が多かったり、もともと高血圧の人が多かったりするので、単に人種の問題で片付けられない部分もあるのですが、白人よりも黒人の方がリスクは2倍であるという厳然たる事実があります。

次に、コントロール可能な危険因子についてです。
コントロール不可能なリスクを背負っている人の場合、このコントロール可能なリスクをいかに低くしていくかが重要となります。他の人よりも、いっそう気をつけなければなりません。

まず喫煙です。喫煙は動脈硬化を促進し、血圧が上ることによって脳卒中のリスクが上昇します。
心臓発作による死亡率を見ても、非喫煙者に比べてかなり高いです。
また、喫煙をしていた人でも、禁煙をすればリスクは低くなり、禁煙期間が長ければ長いほど非喫煙者と差がなくなっていきます。
よく「私はこの歳になるまで、ずっとタバコを吸い続けてきたので、今更禁煙しても変わらないのでは」と聞かれることがあるのですが、そんなことはありません。今日からでも禁煙をすれば違います。
また、「6㎎のタバコから、1㎎のものに変えました。」という人がいるかもしれませんが、安心は出来ません。
止めるか、止めないか、という選択が迫られるのです。

逆に「うちのお爺さんはヘビースモーカーだけど、健康で長生きをしているから大丈夫だろう」 と言われる人もいますが、あくまでリスクのお話です。喫煙の習慣があれば絶対に、という訳ではなく、喫煙するとそれだけ危険を背負い込むということです。
さらに、盛んに言われているのが受動喫煙です。本人に喫煙の習慣が無くても、周りの人達が吸っている副流煙を吸い込むだけでリスクになってしまいます。今は職場での分煙化も進んでおり、空港内や機内、病院でも喫煙所を設けるところは殆ど無くなりました。

他にもコントロール可能な危険因子として挙げられるのが高血圧です。特に脳卒中に関しては最大のリスクです。
また、普段の血圧値というのは、緊急事態が起きたときに必要になる情報です。
たとえば、脳梗塞を起こしたとき、普段からある程度血圧が高い人の場合には、動脈硬化が進んでおり、それだけ血管の抵抗が高くなっています。
そのような人の場合、ある程度の高い血圧で血流を維持しているので、急に下げてしまうと、脳梗塞の症状が悪化してしまうことがあるのです。

今、血圧計は家電量販店などでも安く購入できますので、一日一回、就寝前などリラックスしているときに、時間を定めて計測することをおすすめします。

続いて高脂血症です。コレステロールを摂取しすぎると、血管壁に蓄積し、脳卒中や心臓発作を起こす原因となります。
脂肪摂取は全摂取カロリーの30%以下に押さえるようにします。肉はできるだけ魚か鶏肉、ただし鳥皮は食べないようにしたいです。卵黄は週に3個以上は食べないようにするのがコレステロール摂取を少なくするための方法です。

他にも、コントロール可能なリスクとして挙げられるのが運動不足、糖尿病、肥満、ストレスなどです。
突然激しい運動をして、逆に身体を壊してしまう人がいますので、フィットネスクラブのようなところで、適切な運動量を処方してもらうと良いです。
一日30分程度の適度な運動を毎日続けることが大切です。糖尿病の人の冠動脈疾患の発症率は、そうでない人と比較した場合、男性で2倍、女性で3倍高くなります。

また、狭心症などの場合、普通の人であれば胸が苦しくて冷や汗がでるのですが、糖尿病の人の場合にはそういった症状が出ず、心不全の状態になってはじめて気が付き、治療が遅れてしまうことがあります。
肥満は高血圧と糖尿病のリスクとなっています。まずは体重を5%から10%減らすことを目標としてください。

そして過剰ストレスもリスクとなります。ストレスは数字で表すことは出来ませんが、人が生活していく限り、必ずストレスはつきまといます。あまり根を詰めずに、いい意味で鈍感になれれば良いと思います。

では、どういった症状がでるのでしょうか。
心臓発作の場合には、胸が圧迫、締め付けられるような痛み、動悸、あるいは冷や汗などです。
30分以上続くようであれば、救急車を呼ぶようにしてください。心臓発作は発生から30分を境に、狭心症から心筋梗塞へ移行します。チクチクするような傷みや、痛い部分を指で指し示せるような傷みはあまり心配は要りません。

脳卒中の症状は、ろれつが回らない、意識が朦朧とする、体の片側がしびれたり力が入りにくいなどです。あるいは突然の頭痛に襲われるという場合もあります。
頭をバットで殴られたような傷みや、今まで経験したことのないようなひどい痛みの場合は要注意です。
「突然の傷み」というのは、「昨日大丈夫だったのに、今日突然痛み出した」というものではなく、もっと瞬間的、突然性のものです。
分かりやすい基準として、顔面が左右非対称になっている、両手を目の前の高さまで上げてみて、どちらかの手が下がってしまう、ろれつが回らない、この3つのうちどれかであれば脳卒中の可能性がありますので、一刻も早く救急車を呼んでください。

私たち救急医は、病院に来ていただくタイミングがもっと早ければ……と、悔しい思いをすることが少なくありません。
おそらく、もう少し我慢をすれば症状が治まるのではと思い、救急車を呼ぶのをためらってしまうのだと思うのですが、時間との戦いです。

対応が早ければ早いほど、様々な治療が出来るようになります。ご自身の健康が一番大切なのですから、大げさなどと思わずに、一刻も早く病院に来ていただきたいと思います。

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