東京都福祉保健局技監
医学博士 櫻山 豊夫 先生に聞く
インフルエンザに感染した際の症状としては、急な発熱、咳、体のだるさなどですが、今回の新型インフルエンザは、季節性のものと比べて発熱などの症状が軽い人も多いようです。そのため、発病しているのに外へ出歩いてしまうというケースも考えられ、余計に感染が拡大する恐れがあります。感染する経路は2つ、飛沫感染と接触感染です。
飛沫感染というのは、咳などで痰の中のウイルスがしぶきとなって飛び、そのしぶきを別の人が直接吸入して感染するという経路です。しぶきは放物線を描いて1mから2mくらい飛ぶと言われています。
もうひとつは接触感染です。たとえば咳をする時に、人にうつしてはいけないと思い、手の平で口を押さえます。そうすると、手にウイルスが付着しますが、その手で別の人に触れたり、あるいは階段の手すり、エレベーターのボタンなどに触れたりして、そこから別の人の手へとうつります。そしてウイルスの付いた手で、目をこすったり、鼻に触ったりすると、粘膜からウイルスが進入して感染するのです。
感染の予防については、いくつかポイントがあります。まずマスクの着用ですが、これはウイルスを含んだしぶきを防げればよいので、薬局で販売している普通のサージカルマスクで十分です。それから手洗い。感染を100%防ぐ事は出来ませんが、リスクを減らすことは出来ます。ごしごし洗う必要は無く、むしろ手に傷を付けないよう石鹸をよく泡立て、優しく洗うことが大切です。
感染拡大の速度もかんがえなければなりません。都内の空床は、現在1万5千くらいはありますが、この数は全ての医療機関の総数ですので、たとえば重症患者を受け入れられるかどうかの問題もあります。重症患者のために、できるだけ救急医療期間や、感染症の専門医療期間などは空けておきたい。また、治療薬であるタミフル、リレンザの備蓄量は、全国で流通在庫も含め約五千万人分ほどあり、足りなくなる恐れは無いのですが、感染拡大の速度が速いと、流通が間に合わなくなることもあります。そういった事からも、急激な感染拡大を出来る限り抑える事が重要になってきます。
急激な感染拡大を防ぐために、学校閉鎖、保育園、社会福祉施設の休業という事も、意味がない事ではありませんが、たとえば保育園を一斉に休業してしまうと、親御さんが仕事を休んで子供の面倒を見なければならず、それによる労働力の損失は1割程度、看護婦さんなど女性職員の多い職場での労働力の損失は3割にも及ぶだろうと言われています。つまり、過剰な規制をすると、逆に社会機能、医療体制をも崩壊させてしまうという事です。そのため、バランスを考慮した対策を進めることが大切です。
一人ひとりの感染予防の努力によって、組織、社会での爆発的な完成拡大を防ぎ、欠勤率の増加も防ぐことが出来ます。そしてそれが社会機能の維持、あるいは医療体制にも繋がりますので、皆さんのご努力に大いに期待するものです。