東京都福祉保健局技監
医学博士 櫻山 豊夫 先生に聞く
一時は収束したかと思われた新型インフルエンザですが、この夏、再び日本国内で猛威を振るい始め、これから冬に向かってますます感染拡大が予測されます。そこで、新型インフルエンザに関する最新の情報と、感染の予防法などについて、東京都福祉保健局技監の櫻山先生にお話を伺いました。
4月28日、WHOが発生を確認した今回の新型インフルエンザ。5月20日には国内初の感染者が確認され、初めのうちはその毒性が不明であったため、全例検査、報告が義務づけられていました。6月に入ると、検査しきれないくらいに感染者が増えてしまい、7月には全例検査の取り止め、発熱外来も廃止となり、感染者は一般の医療機関を受診、軽症者は自宅療養することとなりました。
都内に290あります「定点医療機関」と呼ばれる施設に、何名の患者が来院するのかを、週毎に報告を頂いているのですが、この数字が1施設1週間あたり1名を超えていると流行の開始、10名を超えると流行注意報、30名を超えると流行警報となります。7月の終わりには1施設につき約1名、8月の終わりには約3名で、例年の季節性インフルエンザよりも3~4か月早いペースで数値が上昇しています。これが現状ですが、社会機能の維持、あるいは医療体制の崩壊を防ぐためにも、急激な感染拡大は避けなければなりません。
インフルエンザは大きく分けるとA型、B型、C型とあり、そのうちA型は変異を起こしやすいといわれています。ウイルスの表面にはH突起、N突起と呼ばれる突起物があり、H突起はH1からH16までの16種類、N突起はN1からN9までの9種類の存在が確認されています。簡単に言えば、ウイルスはH突起で人の細胞に取り付き、そして増殖をし、N突起で細胞の表面を破り、出て行きます。
新型インフルエンザウイルス発生のメカニズムには三つの説があります。1つは、豚の体内で鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスが交わり、その中で遺伝子を交換し、人に感染する新しいインフルエンザが出現するというものです。二つ目は、鳥インフルエンザウイルスが突然変異を起こし、人に感染する新しいウイルスが出現するというもの。もう1つは、過去に流行したスペイン風邪、アジア風邪などのウイルスが再び襲ってくるという説です。今回の新型ウイルスはA/H1N1型ですが、おそらく一番目のメカニズムで発生したものでしょう。現在までに人間の間で流行をしたものはH1、H2、H3型のみです。例外的にH5N1型、いわゆる高病原性鳥インフルエンザというものが、インドネシア、中国、エジプトなどで人間に感染したという報告がありました。発病からすると4割から6割、最近のインドネシアの報告では8割の人が命を落としている非常に恐ろしいものですが、感染者は鳥に対し、かなり濃厚接触をしていたと考えられます。人から人への感染は極めて例外的で、このまま感染が広まる事は無いだろうとされています。
今、新型インフルエンザに対するワクチンの量が足りないという話が出ております。インフルエンザウイルスは、生きた細胞の中でしか増殖しないため、ニワトリの有精卵の中でウイルスを増殖させてワクチンを作成するのですが、簡単に増産することは出来ません。先のH5N1型については、非常に致死率が高いため、その変異に備えて予め二千万人分くらいのワクチンを備蓄しておりますが(プレパンデミックワクチン)、今回の新型とは型が異なるため、まず効き目はありません。通例の季節性インフルエンザに対するワクチンでも、毎年型が微妙に変化しただけで効き目が悪くなるほどですので、あまり期待は出来ません。新型インフルエンザのワクチンは、新型ウイルスの株を使って新たに作成をしているため、それらのワクチンよりも当然効果的だと考えられますが、増産が難しく1300万から1700万人分くらいしか出来ないだろうということです。
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