
(スポーツキャスター)
世界一を狙うようなアスリートの健康管理というものは、一般の人達とは全く違ったものなんです。時には、自分の健康を捨ててまで、限界を超えなければならないこともあります。私がバレーボーラーとしてオリンピックに出場していた現役の頃も、どちらかというと「戦うための体づくり」という考えのみで、健康管理という意識は全く無かったですね。あえて言うなら、海外遠征の時、乾燥する場所へは加湿器を持参したり、眠る時にマスクをしたり、タオルを喉に巻いたりして、喉を守るくらいでしょうか。
常に限界を超えるようなプレーをするために、怪我は尽きませんでした。1989年に、右足首の靭帯を3本切ってしまった時には、さすがに選手生命の終わりかと感じました。ワールドカップという大きな大会があったのですが、私は中学からバレーを始めて以来初めて自分のポジションを他の選手に明け渡してしまったのです。そこに自分がいないことが信じられませんでした。集団スポーツというものは、チーム全員のバランスを考えて強くするものですから、一人でも交代してしまうと、チームの中で、全く違う化学反応が起きるんです。その結果、より良い成績が残せるチームになれば、そのままで戦おうという事にもなりますので、非常にあせりを感じました。
今では手術やリハビリの技術が格段に進歩しているので、確実に元の状態にまで治るのですが、当時はそういった知識も無く、本当に選手として復帰できるのか、今以上に成長できるのかと不安になり、もうバレーボールを止めなければいけないのかと悩みました。
ですが幸運な事に、リハビリ中に同じ病院に来ていた他競技の選手との交流する機会であったり、他の色々なスポーツの試合を、テレビでじっくりと観られる時間が出来たんです。逆境を跳ね除けて勝利を掴む選手、まもなく引退をされるのに、最後まで力を出し切って戦う選手、そんな人達のプレーに感動をして「このままリハビリも終えずに諦めてはいけない。もう一度コートに戻って戦いたい」と決意し、復帰を果たせたんです。
引退した今は、子供の頃からの夢だった舞台で活動しています。女優業なんて、今までとは全く異なる世界ですが、それでもやっぱり、やるからには上を狙いたいと思っています。もちろんそれは大変なことで、そのためにはバレーをやっていた頃と同じくらいのパワーと情熱を注ぎ、命懸けで取り組まなければなりません。それでも私は、常に走り続けていたいと思うんです。走るのを止めてしまったら、自分の終わりだと思っていますから。
舞台をやっていて感じる事ですが、舞台での台詞や、歌を歌う時というのは、声の出し方が全然違うんですね。バレーボールの試合中に、あれだけ大きな声を出していたのに、今はしょっちゅう喉を痛めてしまうんです。今も少し炎症を起こしている状態です。バレーボールの現役時代と比べると、今は当然、体力、筋力はもちろん、代謝、抵抗力、回復力など、全てが落ちてきています。また、年齢と共に、様々な病気を背負い込む時期に入っているんでしょうね。ですから、ちょっとでも調子がおかしいときには、早めに医者にかかるようにして、人間ドックも毎年必ず受診するようにしています。
健康って、怪我をしたり、病気になったりしたときに、初めてその大切さが分かるものですよね。アスリートでも、女優でも、その他どんな職業でも同じですが、上を目指すからには、健康が大切なんだと、声を大にして言いたいです。今、私が力を注いでいるのは、毎年秋頃に公開する舞台なのですが、アメリカの同時多発テロの際の実話を元にしたお話です。骨髄移植を必要とする白血病患者のために、骨髄液がアメリカから送られてくる予定だったのですが、テロ発生で空輸が出来なくなってしまったんです。その時、ボランティアの方々の力で、何とかして骨髄液を患者のもとへ運び、命を救おうというものです。健康や、命の大切さ、そして助けを求めている人達のために、骨髄バンクへのドナー登録という形で、少しでも力になれる。そういった事を、舞台を通じて、広く呼びかけたいと思います。(談)