まず、胸部単純写真について。検知器に胸を押し付けた状態で、背中側からX線を照射します。すると、肺の部分は黒く写り、肋骨や鎖骨などは白く写ります。稀に乳頭が写りこみ、肺の組織が硬質化した結節と間違えられることもあります。背腹方向の全てが一枚の写真に重なって写るため、全体像を一目で確認することができ、異常があった場合には、一瞬で発見できます。また、手術跡や骨折の跡なども写りこむために、患者の過去の出来事も把握しやすいという特徴もあります。
ほかにも、通常の医療施設ならどこでも配備されている・被爆量が少ない・患者の体調が悪い場合でも撮影しやすい・繰り返し撮影ができて経過診察がしやすいなどの利点がありますが、一方では、背中から胸までの25cmくらいの厚みが全て凝縮されて写るので、病変の正確な位置や、所見の詳細を把握することについてはCT検査に劣ります。また、小さな病変や、鎖骨、血管、心臓付近、横隔膜の下などにある病変は見つけにくく、誤診の恐れもあります。これが胸部単純写真の限界といえるでしょう。

一般的に、肺がんは胸部単純写真で怪しいと思われる部位を見つけ、CT検査で詳しい診断をいたします。CTによる写真は、胸部単純写真のように、正面、あるいは側面からの写真ではなくて、胸の、ある高さの断面が1枚の写真となります。高さを少しずつ変え、連続して撮影をすることで、たとえば気管支が左右に分かれた後、肺に繋がっていく構造などを連続写真で見ることができます。
最近では、ヘリカルCTやマルチスライスCTといったものがあります。ヘリカルというのは螺旋状に動くという意味で、患者さんを乗せた台が直進しながら、その間X線の線源が回転運動をしますので、スキャンを行なう岐路が螺旋状になるわけです。マルチスライスCTは、複数の線源と検出器が並べて配置されており線源を1回転させるだけで一度に広範囲の断面写真を撮影することができます。1980年代、センサーは1列だったものが、やがて4列のものや16列のものが開発され、現在、大きな病院では32~64列というものも設置されております。32列のものでは1回転0.35秒で16㎝もの範囲を撮影することができ、肺の大きさはおよそ30cmくらいですので、撮影時間は1秒くらいです。撮影時間が短いと、患者さんが1回息を止めるだけで撮影を完了できますので、呼吸による撮影像のズレなども軽減できることになります。
マルチスライスCTでは、撮影間隔の薄いスライス写真を、多数撮影できるようになりましたので、それらの断面写真を連続的に組み合わせ、コンピュータ処理をすることにより、立体的な画像や、任意の断面での写真を作り出すことも可能になりました。
例えば、肺の中葉と呼ばれる部分にがんが見つかった場合、がんの組織が胸膜の外へ飛び出しているかどうかを判断したり、リンパ節への転移があるかどうかを確認し、中葉の切除のみで良いのかなどを判断したりすることができます。これは手術を行う上で大変有用な情報となるのです。また、この立体的な画像を応用して、仮想内視鏡検査というものを行なうこともできます。任意の断面の写真を作り出すことが可能なため、患者さんがカメラを飲み込んで撮影する内視鏡の画像と、ほぼ同じものを作り出すことができるのです。ただ、実際に内視鏡を飲み込むわけではありませんので、細胞の一部を採取して、がんの判別をする細胞診を行なうことは出来ません。

さらに、一部の機種では、病変の体積を計算することもできます。腫瘍が良性のものか、悪性のものかを判定するのに「腫瘍倍加時間」というものを判断基準にします。腫瘍の体積が、倍の大きさに成長するまでの時間を見るのですが、この時間が短いほど、がんである可能性が高いといわれています。今までは、単純写真に定規を当てて大きさを測り、計算で体積を求めていたのですが、それを自動的に計算してくれます。
CTによる検査は、胸部単純写真に比べて10倍から500倍の被爆量とされていますが、一般的な健診に使用されているCTでは、その半分から5分の1程度に抑えられています。非常に小さい、初期の段階の肺がんを発見することが可能ですので、早期発見をすることによって、医療費の軽減にも繋がりますし、何よりも患者の生存率を向上させたり、生活の質も高いレベルで維持することができます。また肺がん以外にも、悪性中皮腫、石綿肺、肺気腫、冠動脈の石灰化、肺炎、結核、乳がんなどの発見にも貢献します。CTによる検査で肺がんの死亡率を減少させたという具体的な数字は、残念ながら得られていませんが、小さな病変の見落としや、誤診が少ないということは明らかですので、やはり理想的な検査法といえるでしょう。