
(作 家)
私は、生まれてから小学校三年生くらいまでは虚弱体質でした。すぐに風邪をひいたり、熱が出たりで、学校も休みがちでした。あるとき熱を出して医者に診てもらったところ、ジフテリアと診断されて、二人暮らしだった祖母はショックを受けてしまいました。
遠い親戚に、ジフテリアにかかっても助かったという子がいたのですが、その子はにんにくのすり汁をコップ一杯飲んだそうです。それで祖母に、同じものを一気に飲まされました。そうしたら、蚊帳をひきちぎるわ、布団は破くわ、苦しくて大暴れをしたんです。ですがそれを期に、数年前までは医者要らずの、丈夫な体になったんです。当時の事ですから、ジフテリアというのは誤診だったのでしょうが、にんにくショックで体質が変わったのは事実なんです。真似をしちゃいけませんけどね。
それからは、体の事なんか考えなくても、丈夫なのが当たり前のようになりました。雑誌社で編集の仕事をしていた頃は、野球部に入部していましたし、食欲も旺盛、体力もありました。お酒も飲まない日を思い出せないくらい毎日飲んでいましたよ。
ところが数年前、急にめまいを起こして倒れ、救急車で運ばれたんです。6時間くらい嘔吐し続けて、検査も兼ねて3週間ほどの入院となりました。MRIなどで詳しく調べていただいたのですが、その時に初めて自分は、メニエル系である事、そして血圧も高めであるという事を知ったんです。「にんにくショック」以来、丈夫が当たり前だった自分でしたが、一気にそれが崩れ去った思いでした。
それからは、3カ月に1回、健康診断を受けるようにして、そしてウォーキングも1日に40分くらいやっています。ウォーキングといっても、いかにもそれらしい歩き方や、ウェアを着たりするのは嫌なんですよ。わざわざハガキを手に持って、郵便局に行くふりをしたり、何かのついでで歩いているのだと装うわけです。それと、毎日欠かさず、という義務感も嫌なので、やれるときにやれば良いという、それくらいの気持ちで続けています。
他にも、これはストレス解消法といえるのでしょうか、お酒を飲んだり、食事したりする機会を大切にするようにしています。色々な人と出会って、お酒を酌み交わし、関係を深めるようにしています。時には思いもよらない店を紹介してもらったり。週一回の休肝日は作っていますが、残りの人生、決して長くは無いですからね。もちろんカミさんと過ごす時間も、とりあえず大切にしていますが。
執筆の仕事をする際には、ワープロは使わずに、原稿用紙に手書きをするようにしています。えらくアナログ的ですが、きっと文字を書くという行為自体が好きなんでしょうね。肩こりもあまりありません。自分自身が楽しいと思えなければ、本を読んで下さる人を楽しませる事なんて出来ない範疇の作業かもしれませんね。私の場合、苦しんで書くといったレベルに達していないのかな。そこはこれからも探求が必要ですね。
私もあと二年もすれば古希を迎えますが、70歳の一般的な人達の姿というか、あり方というものを、なるべく参考にしないようにしているんです。70歳というと、会社を辞めて仕事から離れ、孫も出来て、老け込んで、重く、いかめしく、きびしくなっていく傾向があります。それに巻き込まれたくはないんですよね。
私はこれまで、丈夫な体で仕事を続けてこられましたが、「健康であった」という自覚は無いんです。逆に「健康でいたい」と意識しなければいけない状態というのは、自分本来の丈夫さが損なわれているんじゃないかと。自分のやるべき事ができる、あるべき姿でいられる状態というのが、健康の証なんじゃないかと思います。(談)