品川駅前メンタルクリニック
院長 有馬 秀晃
「憂うつ」と「うつ病」の違い
それでは、単なる「憂うつ」と「うつ病」の違いは何でしょうか。誰でも、大きな失敗をしたり、物事が思うようにいかなかったりすると、気分が沈んで落ち込みます。これは「憂うつ」という正常な感情(気分)反応で、通常はその日のうちに、または数日で元に戻るものです。
一方、この「憂うつ」な気分が解消されず、ほとんど毎日2週間以上に渡り続く場合は「うつ病」が強く疑われます。正常な感情(気分)反応と違って「うつ病」の憂うつ感は脳神経細胞の機能不全状態に基づくものですから簡単には回復しません。一般に、神経細胞は一度病的な異常を来すと、回復するまでには数週から数カ月単位の時間を要するからです。さらに、毎日続く「憂うつな気分」に加えて、物事に対して興味・関心がわかなくなったり、もともと楽しめていたことが楽しめなくなったり、何をやっても楽しくない、ということもあれば「うつ病」の可能性がより高いと言えます。
「うつ病」と「うつ状態」の違い
最近では「うつ病」という言葉もよく使われており、「うつ病」との区別がしばしば問題となります。うつ病は病名であり、うつ病性障害の診断基準に該当する病態を指すものです。体の病気に例えて言うならば、「気管支炎」と同じ概念です。
一方、うつ状態は症状(状態像)であり、本来は病名ではありません。やはり体の病気で例えて言うならば、「咳」などの症状に等しいものです。うつ状態の症状をもつ場合、一般にそれはうつ病に伴う症状であることが多いですが、統合失調症や適応障害など他の病気の可能性もあるため、その判別には精神科医による専門的診断が必要です。
うつ病の症状
うつ病の症状について、今一度詳しく述べます。うつ病の中核症状は、「憂うつな気分が、ほとんど毎日で2週間以上続く」「何をやっても楽しめない。興味・関心がわかない」といった精神症状です。また、他によくある症状には「熟睡できない」「食欲がない」「集中力が続かない」「疲れやすい」「自己否定的になる」などが挙げられます。
うつ病の身体症状
うつ病は精神疾患ですが、身体症状をしばしば伴います。よくみられるものは、「頭痛」「肩こり」「倦怠感」「発汗」「胃の痛み」「息苦しさ」「便秘・下痢」などです。身体の詳しい検査などをしても、特に体に異常がないのにこうした症状が続いている場合は、「うつ病」の可能性を考えるべきでしょう。精神症状の訴えが乏しい一方で、身体症状が強く認められるタイプのうつ病を「仮面うつ病」と呼ぶことがあります。「仮面うつ病」は発見されにくく、早期治療ができないことが多いので注意が必要です。一般に「仮面うつ病」の患者さんは体の病気しか念頭にないため、精神科や心療内科にかかりにくいです。
ある研究(三木 治先生:心身医学42(9):586.2002)によれば、うつ病の患者さんがまず初めにかかる診療科は、1位が内科で全体の64.7%に及び、2位が産婦人科(9.5%)でした。精神科は5.6%の4位で、5位に心療内科(3.8%)と続きます。
うつ病のセルフチェックリスト
うつ病は決して稀な病気ではなく、現在のようなストレス社会では多くの人が生涯一度は経験しうる病気であることを今一度強調したいと思います。最後に、うつ病のセルフチェックリストを掲載します(図11)。予防と早期発見がとても大切です。少しでも不調を感じたら、産業医、保健師、精神科・心療内科の専門医にまず相談しましょう。
